過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第25章 腹の探り合い
リヴァイ個人にあげた団子の数は三本しかなく人数分はない。
仕方なくナナシは自分用に取っておいた団子を
テーブルの上に出してやった。
「へぇ~、何か変わったお菓子だね」
「この上に掛かっている液体はなんだろう?シロップ?水飴?」
甘いもの好きな女性二人は、はしゃぎながらみたらし団子を頬張り、
エルヴィンとミケは未知の菓子を前に警戒しながら食した。
リヴァイは懐かしい味に、
昔イザベルとファーランがしていた会話を思い出す。
「相変わらず、うめぇな。
あいつらが言ってたみたいに店とか出せたらボロ儲けだろうに」
「イザベルにもそう言われたが砂糖は高い上、
他の材料が手に入らん」
リヴァイの言う『あいつら』を察して、
そう返すと彼は「そうだったな」と目を伏せた。
イザベルとファーランの死を思い出しているのだろうかと思っていると、
ナナバが場を和ませるように会話を拾った。
「他の材料って何を使ってるの?作るのって難しいかな?」
「いや、作り方は至って単純だが・・・・」
「だが・・・?」
そこでナナシは言い淀む。
醤油とみりんはこの世界に存在していないようで、
どう説明すべきか思案した。
「・・・・街には出回っていない調味料を使う故に、作れぬ」
考え抜いた末に出た言葉がこれだった。
嘘には当たらない・・・はず。
ナナシの言葉に全員が驚いた顔をして、
エルヴィンに至っては何やら考え込み始めてしまった。