過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第24章 ドキドキの治療法
全身打撲の痛みに呻いていたエルヴィンは、
幼い頃の夢を見ていた。
かなりの頻度で見るその夢は大抵悪い夢で・・・
父親が誰かに殺される夢だった。
殺され方や殺す人物はその都度違い、
人の良さそうな男や、そこら辺にいそうな主婦、
憲兵、貴族・・・そして巨人に食い殺される場合もあった。
エルヴィンはその様をジッと見ているしかなかった。
父親が殺される様を見せつけられるのは耐え難い苦痛で、
何とか助けようと頑張るものの身体が全く動かない。
父親を殺し終わった彼らは、最後に必ず言うのだ。
『おまえのせいで、父親は死んだ』と。
そして父親の遺体を残して彼らが去って行くと、
エルヴィンはやっと動けるようになり父親に縋り付いて
只管謝罪した。
発狂しそうな悪夢を見続けてもエルヴィンが自我を保っていられたのは、
この後の展開を知っているからで・・・
父親に縋り付いて泣いていると、必ず現れる人物がいる。
幼いエルヴィンの頭を撫でて、
ぎゅっと抱きしめてくれるその人がいるから
絶望しないでいられるのだ。
やはり今回もその人物が現れ、頭を優しく撫でた後、
後ろから包み込むように抱きしめられた。
その温もりにエルヴィンはホッと安堵の息を吐き、
その人物の背に自らの手を回すと、
頭上で笑った気配を感じた。
顔を上げると、銀髪蒼眼の人物が
心配そうにエルヴィンの額に己の掌を乗せる。
「・・・熱が出てしまったか・・・坊」
「―――――っ!!」
額にひたりと冷たいものが当てられたリアルな感触に
エルヴィンは一気に覚醒した。