過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第22章 勝負!
警戒しながら庭に出ると、
エルヴィンは懐中時計を開き時間を確認したようだった。
「すまないね、私も色々忙しくて時間が・・・・」
さっさとケリをつけようと言われているようでカチンときたが、
ここで冷静さを失っても不利なだけなので考えないようにした。
「君はその格好で戦うのか?」
エルヴィンの問いにナナシは自分の格好を見る。
黒いハイネックのインナーの上に着物と打掛を着ている姿は
動きにくそうに見えるかもしれないが、
これが通常なのでナナシは全く気にしない。
「そうだ」と答えると、エルヴィンは「そうか」と頷いて
あっさり引き下がった。
先程からエルヴィンの言動が妙な気がする。
ジッとエルヴィンを観察していると、
同じく庭に出てきたリヴァイが不機嫌そうに「さっさと始めろ」と促してきて、
ナナシはエルヴィンと向かい合うように立った。
随分高い位置にある彼の顔を見ようとすると
首が痛くなりそうである。
「さて、始めようか。相手を気絶させるか、
降参させたら勝ちで良いかい?」
「あぁ」
そう言うとエルヴィンが対人格闘の構えをする。
その立ち姿を見てナナシは優秀だなと思った。
隙を感じさせないそれは酷く模範的な構えで、
鍛え上げられた肉体の完成度も窺える。