過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第21章 口説く!
壁外から帰って四日―――。
庭付き一戸建ての小さな家を借りていたナナシは
悠々自適な生活を送っていた。
この家はピクシスが別荘代わりに使っている家で、
ナナシが雇われている間借り受けたものだ。
立体機動装置を返却した際、
もう暫く借り受ける約束を取り付けて、
今は骨休めしている最中である。
昼に近い時間に起きたナナシは欠伸を噛み殺しながら、
シャワーを浴びキッチンへと向かった。
疲労のせいで三日間も眠り続けていたナナシは喉の渇きを覚え、
お茶でも飲むかとケトルでお湯を沸かす。
これからどうするか。
探し物の行方もわからず手掛かりもない。
この身体もメンテナンスをしなければいけない。
いっそ、どこかの屋敷に潜り込んでみるか・・・。
ネクロフィリアの貴族なら情報だけでも
得られるかもしれない。
「いい天気だね、ナナシ」
グルグル考え込んでいたせいで庭先からの侵入者に気づかず、
驚いて手に持っていたガラス製のポッドを落としそうになる。
睨みつけるように窓へ視線をやると、
エルヴィンが清々しい笑顔で佇んでいた。
「一つ尋ねたい。ストーカー被害に遭っている場合、
どこに相談すれば良いと思う?憲兵団か?駐屯兵団か?」
「ストーカー被害に遭っているのかい?それは大変だ。
私が相談に乗るから安心しなさい」
冗談か本気かわからない言葉を返された。
「・・・とっとと出て行け。不法侵入だぞ」
「大丈夫、持ち主であるピクシス司令からは許可を取っているから
不法侵入には当たらないよ」
―――あのクソジジィ!!
調査兵団に借りがあるからって自分を売りやがった!!
殴って追い出そうかと考えたが、
エルヴィンの後ろにリヴァイが待機している事に気づき
考えを改める。
二対一、しかも相手は立体機動装置付き。
実に面倒である。