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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第19章 ナナシの能力







人気の無い朽ち果てた家屋でナナシが
銃弾に自分の血を垂らしていると、
見知った気配が近づいてきたので一旦手を止めた。


「続けて構わないよ。万全の態勢でローゼに行きたいからね」


現れた金髪碧眼の男―――エルヴィン・スミスは、
にこりと笑い、当たり前のように隣の椅子に腰を掛ける。

心の中で舌打ちしつつ、ナナシは指を切り
銃弾に血を染み込ます作業を再開した。

『迅鬼狼』のアジトに連れて行ったのだから、
今更隠したところで意味はない。




「君に選択肢をあげよう」



唐突に話を切り出したエルヴィンを見ると、
口元に笑みを浮かべているが真剣そのものの表情が
目に入った。


「銃で巨人を惑わした秘密を話すか、
あの地下室や老人の事を話すか・・・どちらが良い?」

「・・・二択か」

「そう、君には二択以外許されない。これでも譲歩しているつもりだよ?
あぁ、第三の選択で全部話すというのも良いね」

「・・・・・・・・」


そうだな・・・と呟きながらナナシは周囲の気配を探る。

抜け目のないエルヴィンの事だから、
兵士でここを固めているだろうと踏んだら
予想通り何人かの気配を感じた。

共にアジトに行った精鋭と・・・
もっと距離のある場所にも数人配置しているようだ。

調査兵団全員と戦うか、
素直に喋るかの選択肢を与えてやっていると
言われているようなものである。


エルヴィンはきっとナナシが囲んでいる兵士に
気づく事も見越しているに違いない。

つくづく可愛くない男だ。

二択ならば、後者は絶対話せない。
ここで『迅鬼狼』やエッカルトの話をしてしまったら、
まだ生き残っている仲間にも危険が及ぶ可能性が生まれるし、
調査兵団も消される恐れもあるからだ。


それは寝覚めの良いものではない。



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