過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第3章 金髪碧眼の少年の思惑
ハァハァと息を切らせ限界まで走ったが、
目的の人を見失い大きく溜息を吐く。
憲兵に捕まりそうになった時、
突然現れた人に助けられたけどその人は憲兵がいなくなると興味無さそうに自分に背を向け歩き始めた。
何のために自分を助けてくれたのかわからず、
少し途方に暮れたけど俺はその人の後を着いて行くことにした。
その人は多分15~19歳くらいだろう。
肩までしかない髪の毛は銀髪で少し癖があるようだ。
肌も陶器のように白く、瞳の色は自分とは色味の違う蒼色。
冷たい雰囲気を象徴するかのように表情も無く、
まるで人形のようだった。
着ている服の色は白に近い水色で、胸と首元の露出を避けるように黒いタートルネックのインナーを着ていたけど、あの服は多分昔禁書で読んだ東洋人が着ている着物というものなのだろう。
括れた腰に妙な艶めかしさを感じて、
視線を腰からその人の後頭部へ向ける。
・・・女性だろうか?
胸は無さそうだけど、まだ10代なら希望はあるだろうなどと失礼な事を思っていたら、急にその人の足が止まった。
驚いて自分の足も止まる。
その人は溜息を吐くと路地に置いてあった木箱に座り、
俺にも座るようにと木箱を叩いたので隣に腰を下ろした。
暫くお互いに黙ったままだったけど、俺がお礼を口にするとその人から素っ気なく「助けたつもりはない」と言われてしまい、どう返していいかわからない。
じゃあ、どうしてこの人は危険を冒して自分を助けてくれたのだろうか?
「何故追われていた?」と問われ、口を噤む。
もしもこの人が父を殺した奴らと仲間だったらどうしようかと思い、反応を探るべく頭をフル回転させる。
「父が死にまして」と言ってもその人の表情は変わらなかったけど、眼の奥が揺れているのに気付いた。
「軍人ですか?」という質問に、その人の眼は不愉快さと哀しさが混ざったような色を湛え「違う」と答える。
俺は、それは嘘だと思った。
この人の身のこなしは軍人か、特殊な訓練を受けた人じゃないとあり得ないものだと子供ながらに気づいていたからだ。
その時、自分が何故この人を追ったのか理由がわかった。
自分は力が欲しい。
この人から何か教われれば…仲間に出来れば心強いと思ったのだ。
「失礼ですが…」と声に出してから、ハッとする。