過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第17章 物資と信用
食糧はあるが、ガスや油を多く失ったようで
襲われた荷馬車の損失は相当大きいらしい。
ナナバとエルヴィンの会話を聞き、
補給路確保の難しさを痛感する。
こんな事に命を掛けられる人間は凄いと感心した。
本当に巨人を何とかしようと足掻いている姿に、
そういえば『迅鬼狼』にもそんな無鉄砲な人間がいたな、と
記憶に意識を投げる。
『迅鬼狼』が処刑された後も、
一矢報いると叫んでいた仲間の姿を思い出し、ハッとした。
「・・・・ここの・・・街の名は?」
今まで黙って聞いていたナナシからの質問に
四人の視線が注がれた。
「―――ラダトという名だが…」
「街の地図はあるか?」
エルヴィンの告げた街の名前に聞き覚えがあり、
広げられた街の地図を凝視した。
もしかしたら、まだ『迅鬼狼』の物資が残っているかもしれない。
今は廃墟となっているだろうが、
倉庫は地下にあったはずだから可能性としてはゼロではない。
「・・・・出かけてくる」
「待ちなさい。どこへ行くつもりだ?」
足早に出ていこうとするナナシをエルヴィンは呼び止め、
鋭い視線を投げ掛ける。
物資があるかどうかもわからず、
ましてや『迅鬼狼』のアジトの一つを教えることは
躊躇われ言葉に詰まった。
しかし、こうしていても埒が明かない。
「物資があるかどうか、探してくる」
「心当たりがあるのか?」
「・・・可能性がある」
ナナシの言葉に四人が息を呑んだのがわかった。
ここで少しでも物資が手に入るのなら願ったり叶ったりだ。
「わかった。では、我々も同行しよう」
「いや・・・それは・・・」
「君は色々と隠し事が多いようだね。
開閉扉の件では感謝しているが、それと君自身の信用は別問題だ」
「・・・・・・・・・・・・」