過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第13章 重すぎる愛の告白
三発目の蹴りが入れられると、とうとうドアが壊れた。
イイ感じに土煙が舞い、
そこから現れたエルヴィンはラスボスのようである。
ゆらりと蒼い視線が部屋の中を彷徨ったかと思えば、
開け放たれた窓を見るとそれがピタリと止まった。
エルヴィンは何事も無かったかのような表情で
呆然とするリヴァイとミケを追い越し、
窓から身を乗り出し外を確認した。
「・・・・・・逃がしたのか?」
「いや、逃げた」
「逃げたんだ」
ドアが蹴破られた瞬間、
ナナシは目にも留まらぬ早さで窓から脱出していた。
それを黙って見送ったのは事実だが、
決して逃がした訳ではない。
ナナシは敵でも無ければ味方でもない・・・が、
エルヴィンの被害者ではある。
捕獲命令が出ていないのであれば、
そっと見逃してやりたいと思うのが人情という奴だ。
微妙な言い回しをするリヴァイとミケに顔を向けたエルヴィンは、
普段の表情で「仕方ないか」と溜息を吐いた。
「ねぇ・・・あのさぁ~。何があったの?エルヴィン」
破壊されたドアから顔を覗かせたハンジが戸惑い気味に尋ねた。
「そうだ・・・・それをアイツに聞く前にハンジ、
・・・てめぇに邪魔されたんだ」
「え?そうなの?」
リヴァイが睨みつけると、
ハンジはキョトンとした表情でエルヴィンを見遣る。
「エルヴィン・・・ナナシに『汚してやりたい』と
告白したというのは本当か?」
「それはとんだ語弊だよ。
私はナナシに愛の告白をしたんだ」
ミケの言葉を即座に否定したエルヴィンは
少年のような表情で事の仔細を話し始めた。
その姿は本当に恋するただの男だったが、
話の内容は酷いもので・・・最初は興味津々で
目を輝かせていたハンジだったが、
話が進むにつれてその顔に暗い影が落ちた。
リヴァイもミケも同様で「あぁ・・・」と頭を抱えるしか無かった。