過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第2章 金髪碧眼の少年
自分は無表情で何を考えているかわからない人間にしか見えないはずなのに、何故この子供は着いて来るのだろうか?
どうしよう…このままでは面倒な事になる。
子供の前で犯罪を犯す訳にはいくまい、と
一応常識はあるつもりだ。
しかも、その子供先程から全然喋らない。
無言で着いて来るので不気味だ(化け物風情に言われたくないかもだけど)
本気で逃げれば子供は追ってこられないだろうが…
子供の蒼い目が…何かを語るようにジッと此方を凝視していて逃げる気が削がれるのだ。
あれか?
話を聞いて欲しいのか?
人間性の欠ける自分がやっと辿り着いた結論はそこだった。
仕方ないので足を止めると、
子供の足もピタリと止まったので
振り返って路地に置かれていた木箱に腰を掛けた。
子供は観察するように私を見ていたけど、
隣に座るように木箱をポンポン叩くと大人しくそれに従った。
座ったはいいけど、
どう切り出して良いかわからないのでまた困った。
すると、子供がやっと口を開いた。
「助けて頂いて、ありがとう…ございます」
「助けたつもりはない」
「…そうですか」
「……………………」
「……………………」
しまった!
すまぬ、子供よ!
初対面の人間に対してのコミュニケーション能力が
自分に無いばかりに、気不味くなってしまった。
やはり、今度は私から話しかけねばなるまい。
「坊よ…何故追われていた?」
「…………………」
どうやら選んだ話題が地雷だったらしい…
子供が俯いてしまった。
壊滅的に空気が読めない自分が悪いのか?
心の中でテンパっているが私の表情筋は死んでいるのできっと子供には伝わらないだろう。