第1章 「ワタシ」
「ミク? どうかした?」
「へ!? え、あ、うん。何でもないよ?」
「何その返事!! マヌケだぞ~」
「むぅ……ってか蒼ちゃんさ、いつの間にか私のこと呼び捨てに!!」
今日も繰り返す。
何でもない日常を。
学校ではこれだけ幸せなのに。
いや、蒼ちゃんといるときは、こんなに幸せなのに。
あそこでは、私は不必要だから。
「そうだミク、今日誕生日だよね? はいこれ、プレゼント!!」
「あれ、今日だっけ? ありがと、蒼ちゃん」
「自分の誕生日忘れてたの!? それスゴくね!?」
前までは、祝ってくれる人もいなかったし。
覚える必要無かったからなぁ……
「開けていい?」
「もちろん!!」
ガサガサと音を立て、箱を開ける。
中には、黒いヘッドフォン。
「!! やった、欲しかったんだ~」
「ホント!? ミクっていつも音楽聴いてるからさぁ」
こうやって、私のことを見ていてくれる人が、いるんだなぁ————