第6章 麻兎
「はぁ〜っ…」
永光との一夜以来、
瑠璃はため息ばかりついていた。
あれはやっぱり
夢なんかじゃないよね…
その証拠に、永光と顔を合わせる度に
身体が勝手に熱くなり
あの時の光景が蘇ってきてしまう。
鏡の中に見た自分のいやらしい身体…
そんな瑠璃を永光はお見通しのようで、
意味あり気に微笑んでくるから
なんだか落ち着かない。
更に、湯殿で毎日顔を合わせる夏津にも
おかしなところを見られたから…
なるべく言葉を交わさないように
していても、気のせいか、
非難するような視線が痛くて堪らない。
今は更に、また春日局に呼び出され…
今度はどんなお小言があるんだろう
と重い足取りで春日局の部屋に
向かう瑠璃だった。