第14章 日向
大事な女…
水尾の口から改めて出た言葉に
胸が潰れる様な思いのする
春日局だった。
「とりあえず
お話はおうかがい致しましょう…」
「瑠璃を…
今度こそ本当に自由にしてやれ。
それができるたった一人の人間と
話をしてきたところだ。
俺は、あいつの幸せを
あいつ自身の手で選ばせてやりてえ。
お前も本当は
そう思っているんだろう?」
……………………
水尾が提案した方法…
それは春日局とて考えたことが
無いわけではなかった。
ただ、家光亡きあと
瑠璃を支えながら実質的に
江戸城を纏める要職にある自分は
簡単にその答えを導きだせずにいた。
それに、瑠璃の近くで瑠璃を支える
日々は苦しいこともあったが
かけがえのない時間になりつつあった。
水尾様…悔しいが
さすが、天晴れな殿方だ…
水尾が去り、ひとり
物思いにふける春日局のもとに
今朝二人目の客がやってきた。
「やはりいらっしゃいましたか…」
誰にも聞こえないほどの
小さな声でため息交じりにつぶやいた。