第13章 上皇水尾【二】
身支度を整え、ふらふらと部屋を
出て行った瑠璃を見送り
緒形はふぅ~っとため息をついた。
ちょっと悪戯が過ぎましたね…
あのような愛らしい乱れ方をされては
私の方がおかしくなるところでした…
反省しながらも、あの贈り物を見た
瑠璃がどのような顔をするのか…
それを想像しくすくすと笑ってしまう
緒形だった。
そこへ…
「随分と楽しそうだな…おい。」
そこには、戸口に寄りかかり
煙管をふかす水尾の姿があった。
「水尾様…いつこちらへ?」
「御門の奴が…お前が面白え副業を
始めたってうるせえからな…
見に来てやったんだ。」
「それは光栄です…水尾様にも
何かお悩みがあるのですか?」
「まぁあるにはあるが…気が変わった。
結局、俺は俺のやり方でけじめを
つけるしか無えからな…」
水尾様のことだ…
考えの無いことはなさらないだろう。
緒形は、水尾がこの江戸城へ
忍び込んで来ていることには
目をつぶることにした。
私は、瑠璃さんの本当の幸せを
祈っているだけなのです。
それが何なのかはご本人にも
まだわかっていませんが…