第11章 緒形の診察室〜午前編〜
緒形は遠くを見ながらある光景を
思い出すように続けた。
「火影さんが突然姿を消してしまった時
あの方は常に小さな鈴を持ち歩き
とても不安げにされていましたよ。
貴方が誓いを立てたはずの
鈴なのではないですか?
もう二度とあの方にあのようなお顔を
させないと約束して下さい。
例えあの方がご正室を選ばれ、貴方が
ただの護衛の一人としてご夫妻を
お護りすることになったとしても…
どの様な状況になっても、貴方への
信頼は揺らぐことは無いと思いますし、
その点に関しては常に貴方はあの方の
一番なのではないでしょうか…」
「瑠璃様があの鈴を…
分かりました…何があっても
一番近くで護り続けてみせます。
誰にも…麻兎にもその役目を
譲る気はありません。」
「よろしくお願いしますね。
お二人はとてもよく似ています。
だから惹かれあうのでしょうね。」
例え今は方法が無くても、緒形は
目の前の真っ直ぐな目をした青年の
幸せを祈らずにはいられなかった。