第11章 緒形の診察室〜午前編〜
「夏津さん、それは言い訳に過ぎない
かもしれないと本当は気付いている
のではないですか?
貴方への処方箋はこちらです。
人の性格は簡単に変わるものでは
無いですし、気の迷いというのも…
どうなのでしょう?
これまでの様々な出来事で、
知らず知らずのうちに本来の貴方を
封じ込めていただけなのでは?
その事実を、あの方への情愛がきっかけ
で思い起こしただけかもしれませんよ?
私は夏津殿が本当に冷たい方だと
思ったことなどありません。
もっと素直にあの方と向き合って
みてはいかがでしょうか。
自分の努力次第で、大切なものを
大切に出来る状況にあるというのは…
それだけでとても幸福なことなのです。
このまま手遅れにならないうちに…」
「…情愛…確かにそうかもしれません。
いつまでもつまらない意地を張って
惚れた女を泣かせる方が無様な生き方
かもしれませんね…
今日はありがとうございました。」
「頑張ってくださいね、夏津さん…」