第11章 緒形の診察室〜午前編〜
さて、次は…
「鷹司様…どうなさいました?」
「初めての夜伽の時に、俺の前にも
誰かと閨を共にしていた感じがして…
そんなことを訊いたら瑠璃を困らせる
だけだし、気にするのも男らしく
ねえかなと思ったんですが…
どうしても気になってる俺がいて。
しかも、俺の気持ちは伝えてあるのに
一向に正室に指名される気配も無い…
最近のあいつに何が起きているのか
緒形殿は知ってるのではないですか?」
「そうですね…〝上様〟の閨事に
ついては、御典医である私からは
何も申し上げることはできません…
幕府の機密に関わりますので。
ただ…鷹司様の憂いを少しばかり
取り除いて差し上げられます。
処方箋はこちらです。
鷹司様の知っている瑠璃さんは
どのような方ですか?
何事にも一生懸命で真面目、驚くほど
素直で純粋な心を持っている…
そうではありませんか?
…瑠璃さんはいくら夜伽を重ねようと
全く変わっていませんよ。
鷹司様が惹かれたあの方そのままです。
どなたを正室に選ぶのか、
私には正直全くわかりません。
ただ…鷹司様は貴方の知っている
瑠璃さんを信じて時を待つしかない
のではないでしょうか…
貴方が愛したのは
あの方のお心のはずです。」