第1章 きっと・・・。
『3月29日晴れ
深夜三時。
ゆっくりとゆっくりと寝てる家族を起こさないようにしながら玄関へと向かう。
玄関では我が家のアイドル マリーが寝ている。
最大の難所。マリーをなでながらゆっくりと靴を履く。
音を立てないように開き戸を開け、空に広がるは満天の星空。少しだけ寒さを我慢しながら、彼が待つ街灯の下へと急ぐ。
何ヶ月ぶりだろう、長らく会っていなかった。いつの間にか背が高くなっている。会いたかった。ずっと。
こらえきれなくなって彼に抱きついた。
そんな私を見て彼は優しい声で「ひさしぶり」という。
私は彼を包む腕の力を強めた。
「髪の毛、切ったんだ。」
些細なことでも気が付くくらい離れていた。毎日毎日もう会えないんじゃないかという不安がわたしを襲った。
眠れない夜が続いた。どんな時でも心に映るは彼の笑顔。
地元に帰ったら、彼に会える。そんな思いがなれない土地での生活を頑張ろうという気持ちにさせた。
「会いたかった。瑛」
その言葉を聴きたくて、ずっと聴きたくて・・・・。
でももう、その言葉は聴けない。