第1章 Happy Birthday to You!!
「信幸さーん。」
無邪気に笑いながら、陽子はソファーに座る僕の隣に並ぶ。
その手には買って来たパピコ。
「2人で分けっこしようよ。」
「うわー、超リア充。」
男ばかりの世界で生きて来た僕にとっては、憧れのシチュエーションの1つ。夏のリア充の代名詞。
陽子の手からパピコの袋を貰って、その冷たいボトル状のアイスを取り出す。
「まさかこれがやりたくてパピコを買って来たの?」
「そうそう。最初は誕生日だしなーって、奮発してハーゲンダッツにしようかと思ったんだけどねー・・・。」
そこで一度言葉が止まる。
「信幸とリア充らしく、イチャイチャしたくって。」
えへへっと笑いながら僕の肩に頭を乗せる陽子。
その様子は、無邪気なまでに女の子で、可愛くて可愛くて可愛くて。
分かってるぞ。そうやって不意に引っ付く時は、僕の顔が見れないぐらい照れている証拠。
僕はここぞと言わんばかりに陽子の肩に腕を回して、暑苦しいまでに僕に密着させた。
「いっぱいイチャイチャして、最高にリア充な誕生日にしような。」
「・・・うん。期待してる。」
ふふっと笑い合って、せーのでパピコを2人で分けっこした。
パピコなんてすごく庶民的な光景だけど、それでもかっこつけようと思えばかっこつけられるんだな。
レストランやブティックみたいな非日常空間に頼らずに、僕自身が陽子のために言葉や態度で尽くして頑張らないと。
その後2人がどんな8月8日を過ごしたのかは、僕達だけのひみつ。