第3章 異国の地で 【高杉晋作】
艶子視点
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「こら、走ったら転ぶでしょう!」
「大丈夫だよママ!!」
そう言った矢先に、ドテッと音が聞こえる。
(…散々注意したはずなのに)
「…転んだのは、晋作さんが手を離したのがいけないんですよ?」
「あまりにも、猫を追いかけたがっていたからな、つい」
「つい、じゃないですよ!何かあったら…」
「うわあああああん」
声の先を見ると、やっぱり泣いていた私たちの子供。
渡英してからすぐに出来た、私たちの子供はもう、3歳になった。
晋作さんは手術は何度か行ったものの、治療に力を入れたことで殆ど回復していた。
(一時は、どうなるかと思ったけど…)
今は3人で笑って過ごせているから、問題ないのかもしれない。
「大丈夫か?」
そう言って、大きな手のひらで頭を撫でている晋作さんを見るのは、いまだに慣れない。
いかにも、我が道を行くような人が、子供好きのように見えないし。
だけど、そんな光景が微笑ましくて、少しくすぐったい気がした。