第12章 夏祭りと 【高杉晋作】
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「…高杉、さ…」
私が掠れた声で呼ぶと、高杉さんは急いで振り返って私のそばにきてくれた。
「怪我はないか!?」
慌てた様子の高杉さんが珍しい。
「…大丈夫ですよ。…ありがとう、ございます」
私は軽く笑って見せると、高杉さんは安心したように目元を緩めた。
「後をつけて正解だったようだな」
「…!?な、何故京に…!?」
我に返ると、私は高杉さんが京を出ていたことを思い出した。
「…あー、あれだ」
「…?」
「…京に出るのを、3日伸ばしてもらったんだ」
「…ええっ!?」
「あまりにも艶子が残念そうにしていたからな」
「…本当は、高杉さんもお祭りに行きたかったんじゃないんですか?」
「…なんだと?」
「花里ちゃんが、屋台の近くで赤い着流しを見かけたと言っていましたから」
そう言って、私はにやりと笑う。
「…祭りに行きたかったわけじゃない。」
「じゃあ、何でです?」
「お前と祭りを楽しみたかっただけだ」
そういって、高杉さんは不敵な笑みを浮かべる。
…きっと、今の私の顔は真っ赤だろう。
END