第7章 夏祭りと 【徳川慶喜】
艶子視点
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「……………。」
「…………………………。」
「…あの、慶喜さん?」
「…何だい?」
「……近すぎませんか?」
今日は夏祭り。
慶喜さんが誘ってくれた夏祭りに来ていたんだけど、ものすごく不機嫌で。
「別に、近くなんてないさ」
そんなこと言ってる割に、私とぴったりくっついてる。
夏だから、汗も気になるし暑いし大変なのに。
「…………。」
「…………………。」
会話が途切れれば、幾度となく沈黙が襲ってくる。
「…慶喜さん、甘酒ありますよ」
「…いらない」
拗ねてるのか、いじけてるのか、怒ってるのか、悲しんでるのかわからないくらい、無表情な慶喜さん。
「…慶喜さん、怒ってます?」
「怒ってないよ」
即答した慶喜さんの顔は、相変わらず無表情で。
全く感情が読めない。
「慶喜さん、何かあれば言ってください」
私は、この沈黙にいたたまれなくて、勇気を振り絞った。