第5章 夏祭りと 【沖田総司】
「…お礼?」
「艶子さんが私を誘ってくれたことにです」
そう言って微笑んだ沖田さんは、ハッと何かを思い出したように苦い顔になった。
「…艶子さん、すみません。今日は本当に…」
「…え?」
「お忍び、ってことにです」
「ああ!そのことでしたか!大丈夫です、私は全然気にしてませんよ」
私は、沖田さんを安心させるために微笑んだ。
_________
今日は、沖田さんはお忍びでお祭りにきている。
いつもは高めに結っている髪を、低めに結って。
元々この時代のお祭りは、町人中心で行われているために、武士は参加出来ないようになっている。
だから慶喜さんも以ての外、土方さんたちも本当は来ては行けないものだった。
そんな中で私達は、お忍びで遊びにくることを思いついたために、今ここにいる。
「今日は名前を呼べなくても、明日からは何度も呼んであげられますよ?」
そう言って、くすくすと笑うと沖田さんは恥ずかしそうな、照れ臭そうな笑みを向けてくれた。
END