第4章 感情 【沖田総司】
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「沖田さん!来てくれたんですね」
今日も可愛い笑顔を私に向けてくれた。
「ええ、土方さんたちに連行されました」
違う、本当はそんなこと言いたいわけじゃないのに。
私の口からは正反対の言葉が出てきた。
「…そうでしたか。…沖田さん、お酎しますね」
一瞬艶子さんが暗い顔になったのは、気の所為だろうか。
だけど、気の所為じゃなかったらいいのに。
そんなことを考えながら、にこにことお礼を言った。
「近藤さんたちにもお酎をして来ますね」
そう言って立ち上がる艶子さん。
本当は引き止めたかった。
だけど、そんな勇気が少しも出ない私には、出来なかった。
どれだけ、艶子さんを自分のものにしたいと思っただろう。
きっと、これが土方さんたちの言う、好きと言うことなのだろうか。
異人のような服を着て、不安そうに怯えた顔をしていた艶子さんはもう、ここにはいなかった。
今は笑顔に満ちた、素敵な女性になっている。
そんな彼女に、私は惚れたのかもしれない。
私は今日初めて、「好き」という感情を知った。
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沖田総司
「艶子さんを自分のものに出来たらいいのに」
艶子
「大丈夫です、いずれ沖田さんのものになりますから」
沖田総司
「いつ頃ですか!?」
艶子
「いや、もう既になってるのかも…」
沖田総司
「……………。」
艶子
「あ、照れてる!!!」
沖田総司
「…死ぬまで艶子さんに翻弄される自信があります」
END