第4章 感情 【沖田総司】
沖田総司視点
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「総司、今から俺ら島原に行くんだが、一緒に来るか?」
いつものように、土方さんが私に聞いてくる。
外はもう暗みが濃くなり始めていた。
「…藍屋さんへ、ですか?」
いつからだっただろう。
昔は「行かない」と即答していたはずなのに、艶子さんと出会ってから私は変わった。
滅多に島原なんて行かなかった。
元々、女の人には免疫がないし、私にとって近所の子供達と遊んでいる方が何倍も楽しかった。
お座敷遊びをしたとしても、皆さんは本気でやってくれないし。
だけど、艶子さんは違った。
私なんかを気にかけてくれたし、お座敷遊びだって本気でやってくれたし、可憐な笑顔を向けてくれた。
だからだろうか。
日を重ねる度に艶子さんが頭の中をどんどん侵食していった。
そんな、変化に戸惑いの感情を抱いた。
この感情は初めてだった。
1人で悶々と考えていると、土方さんから笑いの含んだ声が降りてきた。
「ああ、そうだ。菖蒲に逢状を出してある」
それを聞いた瞬間、私は笑顔になる。
(もしかしたら、艶子さんに会えるかもしれない)
「行きます」
私は迷わずそう答えていた。