第8章 Love Situation
それはそうです。
たった今、国民的アイドルが爆弾発言をしたのだから。
あたしでさえ、開いた口が塞がらない。
すると一番恐れていたブーイングが起こり始めた。
「皆さんのそのお気持ちは分かります。
しかし、二宮の話を最後まで聞いてやってください」
メンバーさんは、想定内であったという感じで冷静に対処にあたっている。
「皆さん。」
なかなか止まないブーイングの中、和くんの言葉で一気に静まった。
「僕が今日この場で発表した理由は、ファンの皆さんに直接、お伝えしたかったからです。
僕はファンの皆さんを信じています。もちろん、皆さんに対する感謝だったり、元気や勇気を与えられるようなグループでいたいという気持ちは変わりません。
ファンだから、許してくれるだろうという浅はかな思いもありません。
だからこそ、皆さんにこうして発表することを決意しました。
もし、これがキッカケで皆さんが離れていっても、その時はその時でまた、イチから始めればいいと、メンバーが背中を押してくれたんです。
彼女は、自分の事より他人の事を一番に考えられる女性です。何より、一緒にいて楽しいし素の僕でいられるんです。
思っていることを伝えるのが少し苦手だから、何でも一人で抱え込みがちで、僕の前で泣きながら爆発する彼女を抱きしめる度、不思議と愛しさが増すんです。
彼女のその涙さえ愛おしく思えた時、初めて運命というものを感じました。
そう思えたのは彼女が最初で最後だと思うし、最初で最後にしたいと思っています。
皆さん、どうか分かっていただけませんか」
和くんをはじめに5人が頭を下げた。
あたしは、号泣中。
もう、周りの反応とかどうでもよくなってた。
だめだ…どんどん涙が絶えず溢れてくる。
すると、一人の女性があたしの方に歩いてきてあたしをステージの上に連れて行き、あたしが持っていた予備のマイクを取り上げた。
あたしはびっくりしすぎてその場に倒れそうになった。
でも、5人が駆け寄り、和くんが支えてくれた。
「大丈夫か?」
「和くん……」
足に力が入らない…。
「あのっ」
あたしをステージまで連れてきた女性が、あたしと同じく涙を流しながら、あたしたちを見ていた。