第4章 -素直-(笠松幸男)★
-回想-(1時間前)
「あ〜笠松〜!
りあちゃんは
今日はなんで来なかったんだ?」
部活終わり…
部室で着替えていたら、
いつものように森山がうるさい。
「オレに聞くなっつーのっ。
アイツだって
そう毎日暇じゃねーんだろ。」
りあ…清瀬は帰宅部だ。
運動オンチ・観る専門のアイツは、
バスケ部もよく見ていた。
だが…たしか今日も来ていた。
途中まではいつもの2階の隅…
アイツの指定席にいたのを
オレは確認していた。
「さすがりあちゃんのことは、
よくわかるんだな。」
「えっ⁈まさか、
りあさんと付き合ってるんスか⁈」
「そうだったんすか⁈
知(ら)なかったーー‼︎
う(ら)やましーー‼︎」
「お前らいい加減にしろっ!
だいたい付き合ってねーし、
アイツのことなんか、
わかんねーよっ!しばくぞっ!」
オレは1人ずつ飛び蹴りしていった。
「笠松…。落ち着けって。」
小堀にたしなめられるけど、
オレは内心イライラが止まらない。
「あ〜でも、今日りあさん
はじめはいたっスよね?
オレ、休憩の時、
りあさん、3年の…誰だっけ…?
男に呼び止められてたの見たっス!」
な…⁈
それ、早く言えよ、黄瀬‼︎
「なんだって⁈黄瀬、どんな奴だ?」
オレの代わりに森山が黄瀬に聞いた。
「えっと…3年で有名なガラの悪い…」
「芦田か⁈」
「そう‼︎その人っス‼︎
その人と一緒に体育倉庫のほうに…」
芦田…⁈
芦田は、教師も手を焼いている
オレらの学年の問題児だった。
「それ‼︎まずいっすよ‼︎
まずいっすよ‼︎まずいっすよ‼︎」
「早川‼︎うるせーっ‼︎休憩中の話だろ?
もう時間たってるし、
今日はアイツも帰ったんじゃねーの?」
「でも、清瀬って、
帰る時いっつも笠松のトコ来て、
声掛けてくよな。」
たしかに…。
やっぱり何かおかしい…。
「いや、大丈夫だろ。
オレ、帰るわ。お疲れ。」
オレは着替え終わり、
アイツらを置いて先に部室を出た。