第39章 -映画-(宮地清志)
〜恋してラビリンス〜
村木に告白された翌日も、
もちろん部活はある。
すみれは悠馬と悠也と登校するが、
2人の話が頭に入ってこない。
「すみれ?」
「…。」
「すみれー‼︎」
すみれが返事をしないでいると、
後ろから悠也が抱きつく。
「きゃっ‼︎悠也⁈ど…どしたの?」
「だってすみれ返事してくんねーんだもん。」
「ごめんごめん。ちょっと考えごと…」
「考えごとってなんだよ?」
ここまで黙っていた悠馬が聞く。
「え⁈あ…えっと…
ドリンクどれくらい作ろうかな…とか?」
「あっそ。悠也!そろそろ離れろ‼︎」
悠馬がバンッと悠也の頭を叩く。
「いってぇ‼︎何すんだよ⁈兄貴‼︎」
「うっせぇ‼︎オレ先行くからな!」
悠馬はそう言って本当に先に行ってしまった。
「…ったく。」
「悠馬、何かあったの?
昨日からちょっと変…だよね。」
悠馬の変化にはすぐ気付くすみれに
悠也の胸はズキンと音を立てて痛む。
「なーんか昨日から機嫌わりぃんだよな。」
「どうしたんだろ?」
まさか悠馬の機嫌が悪い原因が自分だとは夢にも思わないすみれ…
「そんなに兄貴が気になる?」
悠馬が先に行ってしまい、
少し淋しそうなすみれに
悠也が話しかける。
「え?そりゃ…幼なじみだし…」
「じゃあ、オレは?」
「え?悠也?そりゃ、
悠也の様子がおかしかったら、
もちろん心配だし、気になるよ?
なぁに?悠也も何かあったの?」
すみれはニコッとして、
自分より大きい悠也を見上げ、
手を伸ばして頭を撫でようとした。
「…っ⁈(んな顔で、見るんじゃねぇよ!)」
…ギュ。
「ゆ……うや??」
すみれの行動に、思わず悠也は、
すみれを抱き締めた。
「1コしか違わねーんだぞ?」
「え…?」
「そんだけなのに、ガキ扱いすんな!」
「悠也…⁈あの…⁈」
すみれは悠也の腕の中で動けず、
テンパってことばも返せない。
「兄貴じゃなくて…オレにしとけよ。」
…チュ。
悠也はすみれに
触れるだけのキスをした。
「オレ…本気だから。」
そう言い残し、
先に行く悠也の背中を見つめ、
すみれはただ呆然として、
その場に立ち尽くすだけだった。