第38章 -再会-(青峰大輝)
…っ⁈⁈
「…?あの…?」
オレが固まっていると、
女が不思議そうに話し掛けてきた。
やべ…
「あ…すみません…
えっと…定期…だったか?」
いつになっても、敬語は慣れない。
「はい。
さっき駅を出た時には
あったんですけど…」
不安そうにしている女…
オレは落し物のリストを見るが、
さっき落としたのなら、
今日は特に拾得物は届いていない。
「いまんとこねーから、
これに書け…いてもらっていい…か?」
落し物の届け出の用紙に、
必要事項を書いてもらうため、
女に椅子をすすめた。
「はい。」
女は座ると、すぐに書き始めた。
オレはつい名前を見てしまう。
「檜原…すみれ…」
「え…?」
やべっ…
思わず見てた名前が
口をついてしまった。
「や…あの…いい名前…っすね。」
「…?ありがとうございます。」
ほっ…ごまかせた…のか?
女はキョトンとしながらも、
つづきを書き始めた。
「これで…大丈夫ですか?」
全て書き終わると、
女が届け出用紙を渡してきた。
「あぁ。…っ‼︎わりぃ。」
受け取る時に、
女の手と触れてしまい、
らしくもなく、慌ててしまう。
「いえ…あの…手続きは
これで終わりですか?」
「あぁ。
見つかったら…連絡するから。」
「はい。よろしくお願いします。」
そう言って、すみれは立ち上がり、
ペコリとおじぎをして、
交番を出ようとしたが、
突然振り返って話し掛けてきた。
「あの…‼︎」
「…?なんだ?」
もう行ってしまう…
何か話し掛けなければ…と思っていたら、
向こうから話し掛けられ、
オレはビクッとしてしまった。
「あの…失礼ですけど、
新人のおまわりさん…ですか?」
「…?あぁ。」
「半年前は…高校生…?」
「…‼︎あぁ。」
”半年前”というすみれのことばに、
思わず反応してしまう。
「人違いだったらごめんなさい。
あの…わたし…以前、
駅でぶつかりませんでしたか?」
…っ⁈
まさかと思った。
いや…少しだけ期待してる自分もいた。
でも向こうから言ってくれるとは…。
「あぁ。」
嬉しかったのに、
そう答えるのがやっとだった。