第35章 -冬シチュ三部作③-(青峰/宮地/木吉)
「鉄平くんが両手に荷物持ってたら、
鉄平くんと手繋げないもん。」
…ギュ。
わたしはケーキを持ったのと
反対の手で、
鉄平くんの手を握った。
「…⁈」
鉄平くんはたぶんビックリしていたけど、
鉄平くんは背が高いから、
ちゃんと見上げないと
鉄平くんの表情はわからない。
今は…鉄平くんの顔は見れない。
だって、今、鉄平くんの顔見たら、
わたしが真っ赤なのがバレちゃうもん。
「なんだか懐かしいな。」
「え?」
「子どもの頃は
いつもこうやって手繋いでたよな。」
「うん!」
鉄平くんの手は、子どもの頃から、
わたしの手よりずーっと大きくて、
いつでもわたしの手を
優しく包んでくれた。
「いつから…こうやって…
手を繋がなくなったんだろうな。」
「…⁈鉄平くん…?」
鉄平くんが、繋いでる手を
ギュッとした気がした。
「はは…いや、なんでもない。
今日は2人とも手が冷たいな。
ほら、家入るぞ。」
鉄平くん…どうしたんだろ?
「おじゃましまぁす。
チキン、あっためるね。」
勝手知ったる鉄平くんち。
わたしは台所へ直行し、
チキンを電子レンジで温めた。
「あれ?鉄平くん、これ、おでん?」
ガス台にいい匂いのする土鍋があった。
「ん?おでん〜?
あぁ!すみれが来るって言ったから、
ばーちゃんが作ったのか!」
「ほんと⁈やったー‼︎」
「でも、クリスマスにおでんもなぁ。」
「なんで⁈わたし、大好き‼︎」
鉄平くんは苦笑いしているけど、
鉄平くんのおばあちゃんのおでんは、
わたしの大好物だった。
結局、チキンとおでん、
簡単に作ったサラダや
スープなどを並べる。
「なんだかコタツに並べると、
変な感じだな。」
「でも、やっぱりチキンがあるから、
クリスマスっぽいよ。」
鉄平くんと2人で並んで、
コタツに入る。
鉄平くんと向かい合ってコタツに入ると
鉄平くんと足がぶつかっちゃうから。
コタツの時の鉄平くんの隣は、
わたしの定位置だった。
「メリークリスマス♪」
「おう。」
鉄平くんとジュースで乾杯した。
やっぱり鉄平くんの隣は安心する。
わたしの大好きな定位置。
やっぱり誰にも渡したくないよ…。