第34章 -冬シチュ三部作②-(青峰/宮地/木吉)
すみれは前を向いたまま、
思いもよらないことを言った。
「…オレのどこが余裕なんだよ?」
「付き合う前から…
あんまり顔に出さないし、
いつも冷静だし。
わたしは清志のことばに
一喜一憂してるのになぁ。」
…⁈
意外だった。
すみれがそんなふうに思ってたなんて。
「あのなぁ…オレだって…」
「さっきのくらいじゃ、
清志はドキッとしないのかぁ。
1回くらいドキッとさせたいのにな。」
”オレだって照れるし、
すみれのことばに一喜一憂してる”
そう言おうとした時、
すみれがオレのことばに
かぶせて言った一言で、
オレのそのことばは、
もう少しとっておくことにした。
「ふぅん…じゃ、ドキッとさせて?」
「えっ⁈」
すみれがビックリしたように
オレを見上げて立ち止まった。
「オレのこと、
ドキッとさせたいんだろ?」
オレのイタズラ心に火がついた。
「ちょっ…何言ってるの⁈
今…外だし…あの…」
すみれのテンパる姿は新鮮で、
可愛らしかった。
「じゃ、小さい声でいーから。ほら。」
オレは少しかがんで、
すみれの口元に耳を近づけた。
「き…っ⁈ち、近いってば!もう‼︎」
「ほらー。早く♪
ドキッとさせてくれんじゃねーの?」
周りに人はたくさんいるが、
カップルばかりだし、
皆、自分たち以外に関心はない。
「清志…」
人混みの列が動かなくなり、
立ち止まると、
すみれがオレの腕を
ちょいちょいと引っ張った。
ドキッ…!
本当はその仕草だけで、
オレはドキッとして
内心テンパっていた。
「なんだよ?」
でも、なんてことないように、
オレはすみれに聞き返す。
「もうちょっと…」
恥ずかしそうにオレの腕を
引っ張るすみれの仕草で、
オレはすみれが
どうしてほしいのか気付き、
もう一度、少しかがんで
すみれの口元に耳を近づけた。
「ん…?」
冷静を装うが、
ドキドキするのは止められない。
「清志…」
大好きなすみれの声で、
耳元で自分の名前を呼ばれるのは
くすぐったい。
オレはあくまでも冷静を装う。
「清志のバカ〜!」
な…っ⁈