第31章 -電車-(青峰大輝)[前編]
-青峰side-
「うん!あの試合に出てた人、
皆すごかったんだけど、
青峰くんがダントツですごかった!
もうずーっと目で追っちゃったよ。
魅入っちゃった!」
…⁈⁈
「プレイがね、魔法みたいだったの!
どうやったら、
あんなふうに抜けるんだろうとか、
ボールの操り方とか…
もう青峰くんを目で追ってるだけで、
すごいワクワクした!」
すみれの話は止まらない。
「1年の時の交流戦の1回しか
観れなかったんだけどね。
青峰くんのプレイはまた観てみたいな。
今もしてるんでしょ?」
オレが黙っているのに、
すみれは1人で話し続け、
どこぞの黄色い犬のように、
またオレを見上げていた。
「…おまえ、黄瀬に似ててうぜぇ。」
…ピッ‼︎
オレはすみれにデコピンをした。
よく虹村さんにされてたヤツ…。
「い…ったぁ…っ‼︎
なぁに⁈なんでデコピン⁈
てゆぅか、うぜぇってどういう意味⁈
すっごい失礼ーーっ!
それに”黄瀬”って誰ー⁈」
…‼︎
「くくっ…はははっ…」
「な…なによぅ⁈」
すみれの反論の仕方が面白くて、
しかも、デコピンされて、
おでこ押さえてんのもなんか可愛くて、
オレはガラガラの電車の中で、
気付いたら大声で笑っていた。
「…もう‼︎いつまで笑ってるのー?
けっこう痛かったんだからね⁈」
さっきまでなんとも思わなかったのに、
拗ねた顔まですみれは可愛かった。
「ははっ…わりぃな。
つーか、おまえが
黄瀬に似てんのがわりぃ。
黄瀬っつぅか…犬だな…」
「な…っ⁈犬〜っ⁈
なにそれ⁈ひどくない⁈」
すみれは頭の上に
はてなマークを浮かべながら、
不満そうに言う。
つぅか、オレのコト知ってたくせに
黄瀬のコトは知らねーのか?
「犬って…
チワワとか可愛い犬でしょうね?」
すみれはおでこを押さえるのをやめ、
オレを見上げてきた。
「…まぁ…どっちかっつーと…」
「…なら、許す。」
可愛いっつぅか…
キャンキャンうるせぇトコなんだけどな。
でも、すみれの言い方が、
やっぱり可愛くて、
オレはまた吹き出してしまった。