第31章 -電車-(青峰大輝)[前編]
-すみれside-
ガタンガタン…
はぁ…部活やってないとヒマだなぁ…
部活をしていた頃は、
こんな時間に制服を着ているなんて、
あり得なかった。
ガタンガタン…
授業も終わって放課後とはいえ、
この時間の電車は、
適度に人はいるけどまだ空いている。
ふぁ〜ぁ…
気の抜けたあくびをひとつ。
今日の授業も眠かったなぁ。
車両の端っこの3人掛けの席が、
まるまる空いているのを見つけた。
ラッキー♪
その席の端っこに1人で座った。
もちろん、優先席ではない。
ガタンガタン…
この時間の電車の揺れは、
なんて気持ちいいのだろう。
ヒマな授業を聞いたあとだと、
その揺れの効果は抜群だった。
最近寝不足だったコトもあり、
わたしはスマホや本を見ることもなく、
そのまま寝てしまった。
・
・・・
・・・・・
んん…なんかいつもよりグッスリ…
なんか腕…あったかい…
人の温もりみたい。
目が覚めてきたけど、
まだ起きたくない…
まだ目は開けたくない…
んん…
ギュ…。
…?
……??
腕…ギュ…って…
誰…⁇
恐る恐る目を開ける…。
…⁈
目を開けて
真っ先に目に飛び込んできたのは、
見たコトのないブレザーだった。
ブレザー越しにもわかる
鍛え上げられた腕…。
わたしの腕には、
その鍛え上げられた腕が
ギュッと絡まれていた。
そして、なぜか頭が重い…
「んぁ…」
…⁈
聞いたコトのない低い声が
頭の上で響いたと思ったら、
やっと頭が軽くなった。
でも、腕はまだそのまま…。
ゆっくり頭をあげ、ふと気がつく。
「きゃぁぁぁぁぁ‼︎変態っ‼︎」
太ももの上に、
大きな色黒の手が置かれていた。
わたしはその場で、
出せる限りの大声で叫んだ。