第29章 -噴水-(虹村修造)★
「光平っ!笑未っ‼︎おいっ‼︎走んな‼︎」
秋晴れの土曜日。
午前中に親父の病院に行ったあと、
オレとひかりで、光平と笑未を
駅前のショッピングモールにある
噴水公園に連れてきていた。
大きな遊具の下が、
決まった時間で
地面から水が吹き出す公園で、
光平と笑未は昔から好きだった。
2人とも昨日から
楽しみにしていたらしく、
着いた途端、
遊具に向かって猛ダッシュだった。
「おいっ‼︎転ぶぞっ‼︎」
「2人とも、待って待ってー‼︎」
って、オレが言っている横で、
ひかりまで走りだした。
「こらっ!ひかりまで走んなっ‼︎」
ひかりは楽しそうに
光平と笑未とじゃれていた。
「つーかまーえたっ!」
噴水の手前でひかりは2人をつかまえ、
ぎゅーっと抱き締める。
……………。
弟と妹だが、この瞬間だけは
正直あまり面白くない。
「よーし!ひかり‼︎行くぞーっ!」
光平がひかりの手を取り、
噴水のほうへ行く。
特に光平は、たまにいっちょまえに
ひかりをリードしようとするし。
「ひかりちゃん、行こー!」
笑未は光平と反対側へ行き、
ひかりの手を取る。
「うん!」
「ひかりはダメだ。」
でも、オレは
ひかりが行くのを制止する。
「なんで?」
ひかりはキョトンとしている。
「いいから!光平!笑未!
あとでオレが行くから、
おまえら先に行っとけ!」
「「えーー⁉︎……はぁい。」」
2人ともひかりが来ないコトに
不満げだったが、
遊びたい気持ちが勝ったのか、
思いのほかすんなり引いて、
噴水のほうへ行った。
「なんでダメなの?
2人と遊びたかったのにー。」
ひかりはちょっとスネていた。
「おまえ、こないだのコト
忘れたのかよ⁈」
「こないだ⁇」
ひかりはキョトンとして、
心底不思議そうにオレを見ていた。
はぁぁ…。
もう忘れてるほうが、心底不思議だよ。
「おめぇ、部活帰りに
桃井たちとココに来たとき、
ビッショビショになったじゃねーか!」
あん時は青峰も灰崎もいて…
とりあえずシメんのが大変だった。