第20章 -年上-(黄瀬涼太)**★
「いや…その…とりあえず、
高校生じゃないっスよね?」
私服だし、OL…?女子大生…?
「うん。高校生ではないかな。
じゃ、もう遅いし、
ちゃんと帰るんだよ?」
その人はそう言うと立ち上がった。
「えっ⁈ちょっ…」
オレはまたその人の腕を掴んだ。
「…なぁに?」
その人は警戒心が薄れたのか、
柔らかい表情で、
キョトンとしてオレを見つめていた。
「あ…‼︎
名前っ‼︎名前教えてくださいっス‼︎」
「え…?」
「あ!オレは黄瀬涼太っス‼︎
海常高校1年バスケ部‼︎」
人に名前を聞く時はまず自分から…
オレは先に自己紹介をした。
「リョウタ…くん?」
「そうっスよ。どうかしたんスか?」
その人はなぜだか
オレの下の名前に反応した。
「ううん。あ…如月しずか…です。
えっと…普通に働いてる。」
「普通って〜?」
しずかさん…かぁ。
オレは少しでも
しずかさんのコトを知りたくて、
質問を続けた。
…ん?でも…なんでだ?
「う〜ん…なんて言えばいいのかなぁ?
メーカー系の…」
「ふぅん…じゃ、趣味は?」
「趣味〜っ⁈」
なんか合コンみたい…
と言いながらも、しずかさんは
色々考えているみたいだった。
「う〜ん…
飲めないお酒に飲まれるコト…と、
スイーツ食べるコト…と、あとは…」
「あとは?」
しずかさんはそこで一呼吸置いた。
「バスケ…かな。後輩くん♪」
「…へ⁈」
しずかさんは
オレの腕をポンポンと叩いた。
「わたしも海常出身なの。
しかも、バスケ部のマネやってた♪
武内監督、元気にしてる?」
それから部活の話で盛り上がり、
しずかさんは一度立ち上がったのに、
またブランコに座り直していた。
結局さらに1時間も話してから、
オレらは帰るコトにした。
「あ〜なんか懐かしかったなぁ。」
「しずかさん‼︎
連絡先教えてくださいっス!」
「えっ…⁈うん。いいよ。」
その場でお願いして、
オレはしずかさんと連絡先を交換した。
失恋して辛いはずの夜…
オレは思いのほか
穏やかに眠りについた。