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〜Mint Candy Story〜

第2章 -百合-(氷室辰也)★


-氷室side-



PM8:00


帰宅ラッシュも落ち着いたのか、
電車は立ってる人もいるが、
座ろうと思えば座れる。


だが、オレは座らずに
ドアの近くにもたれて立ち、
読みかけの小説を開く。


キライではないが、
日本語の小説はなかなか進まない。




「あの!電話!
うるさいんですけど。
緊急の電話でもなさそうなのに、
何分話してるんですか⁈」


「あぁ⁈てめぇに関係ねぇだろ⁈」



オレが立っているトコの
反対側の座席に座っている男…
サラリーマンか…?
たしかにさっきからずっと
携帯で話していてうるさかった。


その男に注意している女のコは、
高校生だった。


女のコが注意して男が言い返した瞬間、
周囲にいた人たちはスーッと離れた。



「電車の中です。
公共の場でマナー違反です。」


女のコは怯まない。


「かかってきたんだから、
しょーがねーだろ⁈」



バツが悪いのか、
男は屁理屈を言って立ち上がり、
女のコの肩を掴んだ。


「おいっ。百合っ!」


オレは思わず駆け寄って、
男からその女のコを引き離した。


「…⁈」


「百合、相変わらず気が強いな。」


オレは女のコに向かって適当に話す。


あれ…?
あんなに強気っぽかったのに…
目がうるんでいる。



オレは男を睨みつけた。



「あんた、自分が悪いのに
逆ギレってどういう了見してんだよ?」



「あぁん⁈ガキがなんな…

……○×…◻︎○…⁈」


男はすごい音を立てて、
動いている電車の中で思いきりコケた。



男がオレに殴りかかってくる。

オレは避ける。


男の動きはトロい。

避けるのは簡単。


ただそれだけのことだ。
簡単な構図…。



だが、コケた音に驚いたのか
周りから叫び声があがった。




「百合!降りるよ。」


「え…⁉︎」


男が起き上がっても面倒だし、
オレは学校のジャージだし、
女のコも制服だ。
学校にバレたらさらに面倒だ。



ちょうど駅に着いたので、
オレは女のコに目で合図をし、
その女のコの手をひいて、
電車をおりた。




電車を見送っても、
その女のコと
暫く手をつないだままだった。


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