第9章 -安心-(木吉鉄平)*
-木吉side-
屋内プールに行ったら、
なぜかすみれまで水着姿だった。
か…可愛い。
そう思ったが、
つい、昨日のことを思い出して、
すみれを直視できなかった。
が、ウチの奴らも桐皇の奴らも、
やたらすみれに注目をしていて、
オレはいてもたってもいられなくなって、
自分のTシャツを取ってきて、
すみれに着せた。
今思うと、
先にすみれを連れ出せばよかったな。
「き…木吉くん?」
すみれに呼ばれて我にかえる。
合宿所の裏庭まで来ていた。
ちょうど真横が温泉で、
また昨日のことを思い出してしまう。
「なんですみれまで水着なんだ?」
「練習…桐皇のメニューだから、
プールで息抜きしないかって…」
「…リコか。」
オレは苦笑いしてすみれを見つめた。
「あの…Tシャツ…ありがとう。
また借りちゃったね。」
「ん?あぁ。気にするな。
でも、大きすぎるな。
すみれが着るとワンピースみたいだ。」
当たり前だが、オレのTシャツは
すみれには大きすぎる。
下に水着を着ているのに、
またオレは昨日のことを思い出して、
意識してしまった。
「大きいからいいんだよ。
木吉くんは…大きいからいいの。」
…?
またすみれがあのことばを言った。
「なぁ、すみれ!
前も聞いたけど『大きいからいい』って
どういう意味だ?」
「それは…」
すみれは少し考えるようにしてから、
またオレを見上げて言った。
「大きくて…包んでくれるみたいで、
一緒にいると安心するの。
あとね、木吉くんの大きな手も。
頭にポンてしてくれると、
なんだか安心するの。」
すみれのことばを聞いて、
オレはポンとすみれの頭に手を乗せ、
すみれの頭を撫でた。
「…?木吉…くん?」
「少しは安心したか?」
「う…ん。半分…。」
「半分…?」
やっぱりオレじゃダメなのか?
青峰…か。
そう思ったのをごまかしたくなり、
オレは苦笑いしそうになる。
「木吉くんに…嫌われちゃったから…
だから…半分…。」
「すみれ?」
「あお…青峰くんとキスしてないよ。」
…⁈