第2章 ただ求めればいいもの
バーカウンター内に入ると悠さんが備品の配置やお酒の種類について説明してくれた。
悠「グラスはビール用がここ、カクテル用がここ。カクテル用のロンググラスは割れやすいから気をつけること。」
悠さんは電車でのことはまるでなにもなかったかのように
いつも通り優しく丁寧に教えてくれた。
――意識していたのは私だけなのかな・・・
そう思うと少し寂しい気持ちになる。
悠「で、こっちが―――」
悠さんが伸ばした手が私の手に当たる。
「――っ!?」
私は思わずビクリと反応してしまう。
その様子を見ていた悠さんは急に真剣な顔になった。
悠「・・・わりぃ。あと・・・この前のことも。ごめん。」
そう言うと悠さんは頭を下げた。
どうして謝るの?
謝るってことはやっぱりからかってたんだ・・・
自分の考えに落ち込む私は頭を下げる悠さんに何も言えずにただ黙り込むしかできなかった。
悠「急にあんなことして嫌な思いさせちまったよな?・・・本当、ごめん。」
「・・・違う。キス…されたのが嫌だったわけじゃないんです・・・」
こんなこと言ったって無駄だってわかってる。
でも溢れてくる自分の気持ちを抑えることはできなくて―――
悠「は?じゃあ何で・・・何で急に突き放したんだよっ?!」
悠さんは私の両肩をつかみ、苦しそうな顔つきで私を見つめる。
何でそんなこと言うの?
そんなこと言うなんて、まるで本気だったみたいに聞こえちゃうよ・・・
「・・・だって・・・私はああゆうこと慣れてないから…悠さんは遊びのつもりでも私は―――」
そう言いかけた瞬間。
私は悠さんの腕の中に引き込まれていた。