第2章 ただ求めればいいもの
晴れぬ気持ちのまま時は過ぎてしまい、
バイトの就業時間が近づく。
私は今エレベーターのボタンをなかなか押せずに立ち止まっていた。
「うぅ…」
エレベーター前で格闘していると後ろから明るい声がした。
賢吾「花音ちゃん、おはよー!今日もかわいいね♪」
賢吾さんのいつものノリに少し気持ちが軽くなる。
だめだめ、仕事はちゃんとやらなきゃ!
プライベートは持ち込んじゃだめだもん!
気持ちを引き締め、笑顔をつくる
「賢吾さん、おはようございますっ」
賢吾さんと他愛もない会話をしながらバイト先のある3階へエレベーターは向かう。
3階が近づくにつれ、私の鼓動は速まっていくーー
悠さんに会ったらどんな顔すればいいのかな…
横で話す賢吾さんの話は全く入ってこないまま3階につき、二人でバックヤードに向かった。
店長「二人ともおはよう!花音ちゃん今日もがんばろうね!賢吾は…うん、まぁいいや…」
賢吾「…って俺には無しかいっっ!!」
店長「あっ今日はお酒の名前覚えてもらいたいから、ドリ場で悠についててね。」
このタイミングでまさかの事態………
ど、どうしよう………?!
早くもピンチ到来です。
ーーーーー
重い足取りでドリ場に向かうと女の子の楽しそうな声が聞こえた。
開店前の準備時間なのでスタッフの子なんだろうけど、聞き覚えのない声だった。
?「もー!悠さんっ聞いてますぅ?!」
悠「聞いてる聞いてる。」
そこにいたのはカウンターの前で悠さんに話しかけるお人形のように可愛い顔をした小柄な女の子と悠の姿。
うわ…
あの子、可愛い……
顔も小さく、スタイルもいい、いかにも男の子にモテそうな感じの子だった。
大きな瞳を瞬かせながら悠さんに笑顔を向けていた。
悠さんはというと、ドリンク用のフルーツを切りながら適当に相づちを打っていた。
悠さんだ……
あのとき別れて以来久々に見る悠さんの顔に胸が高鳴る。