第8章 六角☆天根 ヒカル 編
それは授業中だった。
確かに、朝イチから顔色が悪かった気がする。
だが、クラスメイトと言えども話しをしたことがなかった。
その女子が、今回の席替えで隣同士となった。
さっきから、チラチラと気にしていたものの……あんまり具合が悪そうにしていた草野 亜希に声を潜めて声をかけた。
天根『草野、具合悪いのか?』
いきなり声をかけられた草野は、びっくりした顔を俺に向けたが…小さく頷いた。
俺と比べるのはおかしいが、草野は小柄だ。
女子の中でも同様で……。
まさか、そのことを本人は過剰に気にしていたなど知らなかった。
天根『保健室に行くか?』
草野は首を横に振る。
しかし、顔色が段々と青ざめていき……俺は、草野と保健室に行かないか?行かないのやり取りを三度ほど繰り返した。
何故、そんなに我慢をするのだろうか?
女子だから、恥ずかしいのか?嫌、しかし……。
顔色の悪さに考え込んでいると……草野の体は揺られるように体勢を崩し俺の方に倒れてきた。
咄嗟に抱き止めた草野。
教室内は騒然とした。
天根『おいっ、草野!』
気持ち悪さからか、返事が出来ないようで…俺はそのまま抱き上げた。
先生の指示で、保健室へと運んだ。
その放課後。
気まずそうに教室に戻ってきた草野。
友人らが取り囲んでいる。
顔色も良くなったようで、俺も一安心。
鞄を下げて教室を出たときに、俺は草野に呼び止められた。
草野『天根くん!』
天根『草野か。もう、大丈夫なのか?』
草野『う、うん。その……迷惑かけてゴメン。』
天根『気にするな。あまり無理をしないようにな。』
草野『うん、なるべくそうする。』
なるべく?
天根『じゃぁな。』