第1章 立海☆仁王 雅治 編
三年生に進級したある日の昼休み***
立海(ウチ)に在籍している【妖精】と異名のある女子と接点を持つことになった。
本当は、去年の秋に出会っていたのだが……
転た寝する場所の一つ、裏庭の茂みの中の木陰へと食事の後に訪れた。
仁王『ん?先客がいるようじゃ……しかし、珍しいこともあるのう。』
ここには普段、人は来ない。
その理由からか、俺は人の気配がする場所へと踏み込んだ。
一組の男女……男の方は知らないが、女子の顔を見て口を挟むことにした。
仁王『寝込みを襲うのは、感心できんのう。』
転た寝している女子に顔を寄せている男は、飛び上がるほど驚き……慌ただしく逃げていった。
後ろめたいことをしている自覚はあるのか……。しかし…………。
どうやら、また爆睡中の女子。こんなのでは身を滅ぼさないか?
少し思案して、半年前の同じシチュエーションを思い出していた。
あの時も、注意した筈じゃったんだが……。
仁王『起きんしゃい。』
声をかけると、薄っすらと目が開いた。開いたのは良かったんじゃが…………
両腕を差し出す妖精。
妖精『……【蒼】……もう朝?起こして……。ハァッ……夜更かししたからまだ眠い。』
誰かと間違えているようだったが、仕方無く起こしてやると……無防備に俺の腕の中に収まった。
妖精『……ん……蒼、逞しくなった?バスケ部だから……鍛えてるんだっけ。』
妖精をこうも無防備にさせる、【蒼】と言うのは誰?バスケに、蒼と言う奴はいたか?
しかし、まだ意識がハッキリしないようで……腕の中でまどろんでいる。
それにしても………意識を持っていかれる程の可愛い容姿をしているぜよ。
俺は柔らかい髪を一撫でして、妖精に一声をかけた。