第78章 1ヶ月間の出会い。〈岩泉一〉
*一
春高予選が終わって、少したった頃。
放課後に時間ができた俺は久々に父方のじいちゃんが入居している老人ホームに来ていた。
一「すいません、祖父に会いに来たんですが。」
受付の前でそういう時はすぐに事務所の方からそう言いながら一人の女性がやって来た。
「あ、はーい!ではこちらに記入お願いします!」
その人は俺が前回来たときにはいなかった人で、見た目からして、俺と年は変わらないくらいに見えた。
「あ、隆広さんのお孫さんですか。ではこちらに。」
俺の記入したのを見て確認すると、案内し始めた。
「私、先週来たばっかりなんですけど、隆広さんすごい優しい方でいろんな話してくれるんですよ。」
一「そうなんですか。」
"先週来たばっかり"その言葉で見たことがないことに納得した。
「はい!ですから私も楽しくなってしまってつい仕事中なのに話込んじゃうんですよ。」
一「なんかすいません…じいちゃん人と話すの好きなんッスよ。」
「いいえ!謝らないでください。私は隆広さんのおかげでここに来るのが楽しいんですから。」
その人はじいちゃんのことを楽しそうに話してくれた。
それを聞いてると俺も嬉しく思えた。
「あ、ここですよ。隆広さん!お孫さん、来てくれましたよ?」
そう言ってスライド式のドアを開けた。
隆「おー!一かぁ!また大きくなったんじゃないか?」
一「んな、すぐ伸びねーよ。」
じいちゃんは前に来たときよりも元気になっていた気がした。
そして、それはこの人のおかげなのかもって思った。
いや、気のせいかもしれないけど。
「それじゃ私はこれで。」
その人は俺とじいちゃんの会話を聞いて少し笑って部屋を出ていった。