第72章 強くなりたくて……〈岩泉一〉
「は、一…?」
一「あ?」
一緒に帰っている途中私は言った。
「もうひとつ聞いてほしいこと…あるんだけど…。」
一「なんだよ?」
本当はもうずっとわかっていたのかもしれない。
ただ、言ってしまったらこの関係が壊れるのが怖くて言い出せなかった。
でも、さっき一が私の話を聞いてくれてから、もうこの気持ちを押さえるは限界だった。
「わ、私さ………一のことが好き…!…付き合ってほしい……。」
一「は?」
一は驚いた顔をした。
そりゃそうだろう…幼馴染みとしか思っていなかった女子に、こんなこと言われたら…。
「こ、この間は徹にああ言ったけどさ……本当はずっと好きだったの……。」
それでも私は思いを伝えた。
「……って……いきなりこんなこと言われても困るよね……ごめんね…。」
だけど、私はその沈黙した重い空気に耐えきれず、告白を無かったことにしようとした。
涙が今にも溢れ出しそうで、その場を逃げようとしたら。
一「…おい、何返事も聞かずに勝手に行こうとしてんだよ。」
「……え…?」
その言葉と同時に私は一に抱きしめられた。
一「……俺も……好きだよ。お前のこと。…好きだから放っておけなくて、心配したんだ…。」
強く抱きしめられるそれが嬉しくて、涙が流れた。
「ホント……嬉しい……!!」
ただ、それは悲しい涙ではなく、嬉し涙に変わって。
一「あぁ、俺もだよ…。朱鳥。」
-強くなりたくて……-
END