第57章 敵わない相手〈花巻貴大(松川一静)〉
貴「何言ってんだよ。俺は他の誰でもない朱鳥が好きなんだ。だからそんなに顔すんな。」
「っ…うん…!ありがとう。私も好き…!」
朱鳥は俺の腕の中で泣き出して、そんな朱鳥の背中を俺は優しく擦った。
しばらくして
泣き止むと朱鳥が俺の腕から顔を出して離れた。
貴「少し落ち着いたか?」
「うん。」
貴「じゃあまだ時間あるしどっか行くか?」
そう話してるとき
ヴゥーヴゥーと朱鳥のスマホが鳴った。
そしてそれを見るなり
「あ、ごめん!お兄ちゃんからメール来て遅くなる前にそろそろ帰って来いって…。だからもう帰るね!」
貴「え…?あぁ。またな。」
「うん!バイバイ!!」
そう言って朱鳥は帰っていった。
残された俺はただただ突っ立っていた。
そして朱鳥にとって
"兄>彼氏"という方程式は変わらず、
やっぱりアイツ(松川)には敵わないとつくづく思った。
-敵わない相手-
END