第3章 鈍感な二人 〈西谷夕〉
ベンチに私を座らせて夕は隣に座った。
「あ…でも鈍感って何?私なんか鈍かった?」
ふと夕が言ったことを思い出して聞く。
夕「お前…俺が本当に弁当とか忘れてると思ってたのか!?」
「えっ!?違うの!?」
私は素で驚いた。
夕「違うに決まってるだろうが!!あれは…朝練で一緒に登校出来ないから少しでも会える機会を作った俺の作戦だ!!」
「だ、だって〜夕ならあり得ることだし…わかんないよ!!
だいたい!!夕だって鈍感じゃん!!私、夕以外の男子は苗字でしか呼んでないんだよ?気づいてないでしょ!?それに私、他の男子にも告られたことあるけど全部断ったし…!」
夕「んなこと気づかねーよ!!」
「しかも、いっつも『潔子さん潔子さん』ってあれじゃ誰がどうみても清水先輩が好きとしか見えないって!!」
夕「なっ…潔子さんのせいにするなよ!」
「別にしてないけどさ…告る気も失せちゃうよ…。」
実際、夕がバレー部マネージャーの清水先輩のことをよく話していて少し嫉妬していた。
あんな綺麗な先輩に私が敵うわけないし。
夕「…。潔子さんは憧れだ。どんなにも手を伸ばしても届かない…そうゆう存在なんだ!」
少し真剣な声でいう。
「じゃ…私は?」
夕「…朱鳥は…憧れじゃなくて…ただ好きなんだ!守ってあげたい、誰にも渡したくない!!俺が好きなのは朱鳥だけだ!!」
顔を赤くして言う夕を見て私も顔が熱くなる。きっと真っ赤なんだろう。
「うん…私も…夕が一番好き。」
そう言って少し沈黙が続いた。
そして突然夕が立ち上がった。
夕「ほら!!行くぞ!日が暮れる!」
そう言って手を差しのべてきた。
「うん!!」
それが素直に嬉しくて夕の手を握った。
もっと早く素直になればよかった。
もっと早く自分の気持ちをいえばよかった。
こんなに幸せな気持ちになるなら……。
-鈍感な二人-
END