第32章 俺のものだから〈黒尾鉄朗〉
どしゃ降りの雨の中
俺は走って待ち合わせの場所に向かう。
黒「悪い!!!遅くなった!!」
そして朱鳥の姿を確認する。
「……だれ?」
けど朱鳥はキョトンとした顔で俺を見る。
黒「…お前…誰待ってたんだよ?」
そりゃ雨に濡れて髪型が崩れてるけどさ…。
「あはは!ウソウソ!ごめん!!
お疲れクロっ!!はいタオル!!」
朱鳥は笑って俺にスポーツタオルを頭にかけてくれた。
黒「…おう。サンキュー。」
朱鳥は
去年から付き合ってる彼女。
元気で子供っぽくてよく振り回されているけど
美術部の部長をしていて意外としっかりしている。
センスもあるようで何度か賞も取ったことがあるらしい。
俺はそんな朱鳥も
朱鳥が描く絵も好きで嫌いになったことなんて1度もない。
……けど知らなかった。
朱鳥が俺の前では強がって明るく振る舞っていたことを。
それは部活の休憩中のことだった。
夜「お前と黒羽っ本当仲いいよな?喧嘩とかしたことねーの?」
黒「ねーな!!俺ら相思相愛だから!」
夜「本当お前が黒羽のこと話してるとこ見るとイラつくわ…。」
黒「そう妬むなよ。早く彼女作ればいいだけだからさ!」
海「そんなに黒羽とこ好きならちゃんと美術部の奴らから守ってやれよ?」
黒「…は?なんだよそれ!?」
夜「はぁ!?知らねぇのかよ!?黒羽美術部の連中に嫌がらせ受けてんだぞ!?何度か見かけてやめるよう言ってやったけどさ…。」
黒「…そんなこと俺には何も言わなかったぞ…。」
海「心配かけたくなかったんだろうな…黒羽のことだし。」
夜「俺が助けたときも平気だからお前には言うなって口止めされたしな。」
始めて知る事実。
家に帰ってずっと考えていた。
今までずっと我慢してたんだろうと気づいてやれなかった自分が情けなかった。