イケメン王宮◆ユーリ×プリンセスの物語【R18あり】
第11章 政略
サラの脳裏に
またユーリの事が過った。
屈託のない笑顔。
いつも助けてくれた、力強い腕。
笑い声の絶えなかった幸せな時間。
しかし…
行方は知れぬまま
ユーリは、あれから一度も
姿を見せてはくれなかった。
ユーリの事を考えると
どうしても
次期国王候補を選ぶ気分になれなかったのだ。
サラは言葉を詰まらせたまま
黙って俯いた。
ジルはサラの様子を伺うと
その先を続けた。
「では、ゼノ様に
お受けすると、お返事させて頂きます。
大丈夫ですよ。
婚姻前提ですで
すぐにどうこうという事はないでしょう」
サラは膝に置いていた手にぎゅっと力を込めた。
「三日後、シュタインに向かって頂きます。
ウィスタリアの顔として
恥じる事のないよう
精一杯努めて下さい」
ジルは優美な笑みを浮かべ、その場を後にした。
サラは俯いたまま思う。
(あの時…
『好き』と言ったあの時
ユーリから返事はもらえなかった。
私は受け入れてもらえなかった。
……いい加減、忘れなきゃいけないよね…)
「ユーリ…」
広い食堂で一人
無意識にぽつりとつぶやいた。
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ジルに差し出された手を取り
馬車を降りると、サラは息を飲んだ。
目の前にあるシュタイン城は
大きく、美しく、
そして
なんだかとても、重々しく見えた。
アルバートというゼノの側近が出迎えてくれた。
彼はサラを足元から
じろりと一瞥すると
「こちらへ」
と一言だけ言って、先を歩き出した。
(…なんだろう?なんだか、嫌われてる気が…)
「さ、参りますよ」
ジルが笑みを絶やさずサラを促した。
その様子を城の窓から伺っている一人の影。
「来ちゃったんだね……サラ様……」
吐息と共に、苦しそうに言葉を零すと
その姿はカーテンの向こうへ消えて言った。