イケメン王宮◆ユーリ×プリンセスの物語【R18あり】
第9章 虚勢
「どうして急に……?
私、何も聞いてない」
人事に何かあれば
必ずジルが報告してくれるはずだ。
「この事は誰にも、
ジル様にも言っていないもの」
ユーリは笑顔を絶やさない。
「っ……どうして」
「これ以上は答えられないんだ。
ごめんね、サラ様」
ユーリは有無を言わせぬ笑顔を作って
「さ、帰って。
城まで送るよ」
来た道を戻ろうと歩き出した。
ユーリの様子から
普通の状況ではないと悟ったサラ。
(きっと、今言わないと後悔する)
サラは
ユーリのジャケットの背中を掴み
きゅっと身体を寄せた。
「っ……サラ様?」
肩越しに振り返ったユーリの目に
俯くサラが見え
ユーリの鼓動が大きく跳ねる。
背中に感じる愛しい人の体温に
抑えていた欲望が顔を出そうとする。
サラは震える声で言う。
「行かないで、ユーリ」
(サラ様、だめだよ……)
ユーリは肩越しにサラを見つめたまま
動けなくなった。
「私っ……ユーリの事が、
……好き……」
サラは俯いたまま
掠れた声で、しかしはっきりと告げる。
「えっ?」
一瞬聞き間違いかと思い
首を傾げるユーリに向かって。
「好きっ」
サラは顔を上げ
大きな瞳を潤ませて
真っ直ぐユーリを見て
必死に伝えた。
こんなに意地らしく、美しい人
見た事がない。
その瞬間、ユーリの目の前が真っ白になり
サラ以外、何もかも見えなくなった。
(ああ、もう…だめだ)
ユーリは
魅入られたように振り返り
震えるサラの唇を
吐息ごと
奪った。
サラは大きく動揺して瞳を揺らす。
が、やがて瞳を閉じ
静かにユーリの口付けを受け入れた。
これまで抑制していた反動か
ユーリは
自らの理性が
完全に崩壊するのを感じた。