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イケメン王宮◆ユーリ×プリンセスの物語【R18あり】

第9章 虚勢


次の日
一日の仕事をおえたユーリは
一人、夜の庭を歩いていた。
少し強い風が吹いていて
上着の裾をはためかせる。


ふと振り返って仰ぎ見ると
ちょうど雲が晴れて
まん丸い月が
ウィスタリア城を
夜闇に白く浮かび上がらせていた。


初めて城門をくぐった時には
想像もしていなかったが、
もうこれで
二度と見ることはないだろうと思うと
少し名残惜しい。


ユーリはサラの部屋のバルコニーに視線を移す。
まだ灯りが漏れている。


(今日は早く休んでねって言ったのに)


今日のパーティでは
休む間もなく
知らない男性からダンスを申し込まれ
なんとか乗り切ったものの
心も体も疲れているはずのサラ。


だが
パーティが終わってから
ユーリが入れたお茶を飲むその顔には
疲れを微塵も出さず
優しい笑みを宿していた。


いつも通り
自分よりも他人を気遣う
優しいサラ。


ユーリは緩く微笑み
最後に瞳に焼き付けた
サラの笑顔を思い出した。


胸の奥に
不安にも似た痛みが広がっている。


いつかこの痛みは薄れる日が来る。


そう言い聞かせるように
サラの部屋から視線を反らし
踵を返して歩きだした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ユーリが踵を返した直後、
夜着のままのサラが
バルコニーに出てきた。
強い風が乱す髪を片手で押さえて
外を眺めながら
物思いにふける。


今日はユーリの様子が
いつもと違っていた。
笑顔は絶やさないものの、
心なしか
いつもより一段と丁寧に仕事をこなし
時折、じっとこちらを見るユーリ。


(きっと何かあったんだ。
心配だな……)


いつも傍にいる
サラだからこそ分かる
ユーリの変化。


と、庭に人影が見えた。
誰かと思い、目を凝らす。


「ユーリ……!!」


森に向かって歩いているようだった。
胸に不安が沸き上がり
サラは考えるよりも先に
ショールを羽織って
部屋を飛び出していた。
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