イケメン王宮◆ユーリ×プリンセスの物語【R18あり】
第32章 【禁断の果実】~第9章 秘する~
==============
(間に合って…!)
ユーリは夜の山道を、馬で駆けていた。
月が雲で隠れ……ぽつ、ぽつ…
雨が降り始めて、視界が悪くなる。
が、何一つ、見落とすわけにはいかない。
サラを乗せた馬車が
無事にウィスタリア城に着くまでは。
(さっきの奴ら…
あっさり撤退しすぎだった。
間違いない。今夜、雨に乗じてやるつもりだ)
ユーリは、今日も、
ウィスタリア騎士団に紛れ込み、
サラの馬車を襲おうとしていた部隊を一つ、打ち散らした所だった。
鋭い視線で辺りを警戒しながら、
馬車を目指す。
(この辺りを走っているはず)
ユーリが馬の速度を弛めた時。
雨の音に混じって、
剣を交える金属音と
怒号が聞こえた。
(…………っ!)
すでに戦いが始まっていると瞬時に察したユーリは
音のする方へ目を凝らす。
と……
扉が開け放たれ、
止まっている馬車が目に入った。
(サラ様の馬車!)
周囲の視線に気を配りながら
すぐに駆け寄る。
が、中にサラはいない。
(…どこに…!?)
辺りを見渡すと
少し先の木々が、大きく揺れているのが見えた。