イケメン王宮◆ユーリ×プリンセスの物語【R18あり】
第29章 【禁断の果実】~第6章 瞑る~
『っ……』
サラは、はっとしたように、胸元を隠し、
ソファーの上で膝を抱える。
『…ユーリ、どうして……こんなっ』
ユーリはすっと立ち上がると、
くるりと背を向けた。
「良かったね。
イケメンのお金持ちと婚約出来て。
せいぜい幸せになってよ」
ユーリはそう言うと
そのまま部屋を出て行った。
[ユーリ、どうして…?
まるで…]
ユーリの背中を
サラは呆然と見送った。
===
サラの部屋を出たユーリは
自室へ戻らず、
中庭へ出ていた。
柔らかい風が、頬を撫でる。
ユーリは、ゆっくり睫毛を持ち上げて
滲む空を見上げた。
空には、カシオペアの星たちが
手が届きそうなほど眩く瞬いている。
(もともと、そんな権利なんてなかったのに
立場を忘れて
強欲に欲しがってしまった罰なんだ。
さよなら…
可愛くて、優しくて、
愛しい……俺のサラ様。
もう、俺は……貴女に触れない。
俺は、元の俺に戻るよ。
それが俺の………存在意義だから)
ユーリの琥珀色の瞳に
迷いのない色が
切なく滲んだ。
次の日。
ユーリが、サラの部屋に
来ることはなかった。
【禁断の果実】
~第6章 瞑る~
End
2016年7月22日